
科学警察研究所(かがくけいさつけんきゅうしょ)を仕事場に

同じ理科系(けい)の研究者でも,純粋(すい)にだれも知らないことを知りたいと思って研究を進めている人がいます。現在(げんざい)までの科学の進歩はそういう人たちのおかげだと感謝(かんしゃ)しています。しかし,わたし自身は,どちらかというと,研究が実社会で何らかの役割(やくわり)を果たすような仕事をしたいと思っていました。就職(しゅうしょく)活動をするときになり,先ぱいから警察(けいさつ)で犯人(はんにん)をつき止めるための,DNA鑑定の研究の仕事があることを聞きました。仕事の目的がはっきりしていて,人の役に立てる仕事だと思えて,この仕事を選びました。
鑑定の精度(せいど)があがると,真実が明らかになる


自分の仕事が役に立っていることを確信(かくしん)したできごとがありました。2006年(平成18)10月にアメリカでの「国際個人識別(こくさいこじんしきべつ)シンポジウム」という学会に出席したときのことです。無実なのに犯罪者としてたいほされた人の講演(こうえん)がありました。その人は,無実をうったえていましたが,無実だという証明(しょうめい)ができず,長い間,こうりゅうされていたのです。ところが,DNA鑑定が進歩したために,無実が証明されたのです。「わたしが自由になれたのは,みなさんのおかげです。」という言葉に,とても感動しました。かれの言葉は,直接(ちょくせつ),その犯罪の鑑定にかかわった人にだけ向けられたものではなく,この学会のすべての研究者に対してのお礼でした。わたしも,事件(じけん)現場(げんば)に残された犯人のわずかな体液(たいえき)や毛髪(もうはつ)などからでも,疑(うたが)わしい人の特定につながるような鑑定方法を研究するチームに属(ぞく)して,実用化した経験(けいけん)がありました。ですから,自分のやっているDNA鑑定の仕事が,“無実の人を罪(つみ)におとしいれないことに役立つ仕事なのだ!”とほこらしく思いました。



