
目の前のことに誠実(せいじつ)に向き合っていたら……

もともと,映画監督になりたいという夢に向かって生きてきたわけではないのです。とにかくいつも,次のステップにふみだしたいと思い,一歩ふみだしたら,いろんなことにぶつかるのです。それを誠実に一生懸命(いっしょうけんめい)こなしていたら,次に進むべき方向が何となく見えてきて,その方向に一歩ふみだしていく。そんなことの連続で今にいたっています。旅にたとえると,目的地に向かってまっしぐらの旅ではなくて,だいたい目的地だと思われる方向に少し旅をして,そこでおこるいろんなできごとに一生懸命対応(たいおう)していたら,次に進むべき旅先がみつかり,また少し目的地に近づく旅をつづけるっていう感じだったような気がします。目の前のことを一生懸命やっていたら,自分が何者なのか【何に向いているのか,何がやりたいのか】が見えてくるんですね。
みんなバラバラだけど,いっしょなんだ!

多くの人に知ってほしい叡智(えいち)【物事に深く通じた】の人のドキュメンタリー【記録映画】をとっているので,いろんな人に会うのですが,とにかく楽しいしおもしろい! だいたい,わたしの知らないことをたくさん知っていたり,わたしにはとてもできないことができたりすることを目(ま)の当たりにできることは素敵(すてき)なことです。相手に対してのめりこむように取材してしまう。大好きになってしまう。そして,いつも不思議なことに,『あっ!自分とおんなじだ!』という部分を感じるのです。それは,叡智の人だれもが語る,「自分は,地球という大きな生命の一部分として,今ここに生かされている」という感覚なのです。会う人それぞれの分野で,体験していることはみな別々なのに,最終的には同じ感覚にたどり着くということに気づいたとき,みんな別々にちがっていることのすばらしさを体感したのです。
身体のすべてで感じる体験が大事!

沖縄(おきなわ)の叡智の人「名嘉睦稔(なかぼくねん)」という人を伊是名島(いぜなじま)というところで取材したときのことですが,4歳(さい)の息子を連れて行ったのです。島を案内してくれるということで,名嘉さんと3人で,ジャングルのようなしげみを歩いていたとき,急に名嘉さんがジャングルに飛こみました。もどってくると40cmくらいのトカゲをつかまえているではありませんか。かれは,沖縄にすむ生きもののことなら何でも知っているのです。トカゲを裏(うら)返し,どこだかを指で数度なで,おとなしくすると,息子にそっともたせたのです。息子は,生きたトカゲを見たことがありませんでした。それも直接(ちょくせつ)さわるなんて……。どうなることかと心配しましたが,最初はこわがっていた息子も,次第にうれしそうな顔でトカゲを観察しはじめたのです。それ以来,名嘉さんを見る目がすっかり変わりました。まるで英雄(えいゆう)を見ているようなのです。名嘉さん【人としてのホンモノ】やトカゲ【生きものとしてのホンモノ】にふれて息子が変わっていく姿(すがた)に,わたしも感動したのです。
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